里親活動を始めるきっかけを教えてください。

こどもが大好きで何人か欲しかったのですが、授かったのは1人。近所に里親をされている知人がいたので、里親活動について聞ける環境はありました。ただ、まだ息子が小さかったこともあり、最後の一歩が踏み出せなくて。しばらく経ったある日、久留米市の広報紙で里親募集の記事を見つけました。その頃にはもう息子が成人していたので、思いきって連絡をしてみることに。私たちがどんな家族かを知ってもらいたかったので、家族全員で児童相談所に説明を聞きに伺いました。

里親になるためには、どのような研修がありましたか?

テキストに沿って、ケーススタディ形式で行われました。担当の方とディスカッションする感覚で進められたので、とても理解しやすかったです。児童養護施設で行われた実習では、こどもたちと遊んだりご飯を食べたりしました。一緒に過ごしながら元気な笑顔に触れるうちに、里親活動への不安もなくなっていきました。全部で1週間ほどのプログラムでしたが、都合が合わない日は融通を利かせていただけたので、無理なく受けることができました。

どのような里親活動を行っていますか?

一時保護委託など、短期を中心に活動しています。里親を始めた頃は、短期の経験を積んでから長期にチャレンジしようと思っていたのですが、短期のお子さんとのご縁が多くて。事前にお子さんと何度か顔合わせをする長期と違って、短期の場合は母親の急病などが原因で、突然依頼が来ることも珍しくありません。その時の自分の状況に合わせて、無理のない範囲で預からせていただいています。

里親になることに対して、ご家族はどのような反応でしたか?

夫も息子も、こどもが好きなので大賛成でした。ただ私の親は、里親が大変そうという先入観があったようで、「わざわざそんなことをしなくても」と心配されました。でも今は応援してくれていて、預かったお子さんを連れて行くと、親だけでなく実家の家族みんなが、「お菓子食べる?ジュース飲む?」と可愛がってくれています。

里子さんはすぐ家庭に馴染みますか?

私の場合、お預かりするお子さんは乳幼児が多く、大きくても5歳くらいまでです。ですから来てしばらくは、やはりママを恋しがって泣きますね。病気で入院中のママに替わって預かるケースでは、抱っこをして「ママのところに行きたいよね。ママは今、病院でチクンしているから、よくなったら帰ろうね」というように、気持ちに共感するようにしています。また、うちは猫と犬を飼っているので、一緒に遊ばせることで気分を持ち直してくれます。

里子さんとは普段、どのようにして過ごしていますか?

できるだけ多くの人に会う機会を作っています。例えば、大人数が住んでいる実家に連れて行ったり、義父が農家に肥料を卸す仕事をしているので、配達に連れて行ってもらったり。そうするといつの間にか、人見知りだった子が、初対面の方と戯れ合うようになっているんですよ。ほかにも、女の子だと家でクッキーを一緒に焼いたり、男の子だと自然と触れ合わせたりと、家族が無理しない範囲で遊ばせています。

里子さんを預かっている時に心がけていることはありますか?

健康に育ってほしいので、食育と規則正しい生活を心がけています。きちんと3食とらせて、もし生野菜を食べなかったら煮たり焼いたりと工夫します。夜ふかしもさせずに、朝は決まった時間に起こすようにしています。
また、母親のもとに帰ることを考えて、過度に甘やかすこともしていません。例えば保育園に連れて行く時も、車から降りたら抱っこをせずに、自分で歩いて先生のところまで行かせるようにしています。戻ってからの生活とギャップがあると、母親が大変でしょうし、何よりお子さんが戸惑うと思うんですよ。

大変だったことはありますか?また、どのようにしてそれを乗り越えましたか?

周りからよく「大変でしょう」と言われますが、そんなことはまったくなくて。こどもが大好きな私にとって、ぴったりの活動だと思っています。ただ、元気なお子さんばかりなので、体力を使いますね。少し休みたい時は、夫や息子に頼めば公園などに連れ出してくれるので、その間にリフレッシュしています。1人で全部やろうとはせずに、家族と協力することが大切だと思います。

どのような時に、やりがいや喜びを感じますか?

みんなそろって「いただきます」をして食事するなど、ごく普通の生活のなかで喜びを感じています。やりがいを感じるのは、お子さんに成長が見られた時。お菓子や果物をもらうと、初めの頃は「なぜこの人は物をくれるんだろう」と不思議そうな顔をしますが、少しずつお礼が言えるようになってくるんです。そうすると、幼稚園の先生から「最近、ありがとうが言えるようになりましたよ」と言ってもらえて。第三者の方からこどもの成長を誉めてもらって嬉しくなるのは、本当のお母さんと変わりませんね。

里親になって、あらためてよかったと思うのはどんな時ですか?

この年齢になると、子育てをする機会はなかなかありません。また私の場合、実の子が男の子だったので、女の子を育てたいという願望がありました。短期間でもそういった経験ができているのは、すごく幸せなことです。もし里親活動をしていなかったら、だらだら過ごして1日が終わるような日々だったかもしれません。
さらに息子にとっても、いい経験になっていると思います。自分がどのように育てられてきたかを、里子さんを通して再確認する機会になっているのではないでしょうか。

里親に関心のある方へメッセージをお願いします。

里親活動は、決してハードルが高いものではありません。里親支援機関がしっかりとサポートしてくれますし、里親会を利用すると里親同士の繋がりをもてるし、困ったことも相談できます。少しでも気になっていたら、重く考えずに、まず短期から始めてみてはいかがでしょうか。1ヶ月が厳しければ10日、10日が厳しければ1週間と、無理のない範囲で預かることができます。もちろん、忙しければ断ることもでき、そんな時は次の里親さんがしっかりバトンを受け取ってくれます。短期で少しずつ経験を積むと自信がつき、次は長期で受託してみたいと思えてくるかもしれませんよ。

そのほかに伝えたいことがあればお願いします。

年齢を重ねても、重ねたなりの里子さんとの接し方があると思います。例えばあと2年で60歳を迎え体力的に不安だという方も、逆算して1年や半年、3ヶ月間であれば、無理なく預かることができます。ですから、年齢を気にせずにチャレンジしてみてほしいですね。