里親活動を始めるきっかけを教えてください。

賑やかな家庭に憧れていて、こどもは4人欲しいと思っていました。3人のこどもに恵まれましたが、私が早産体質だったということもあり、4人目の出産を諦めることに。ちょうどその頃、テレビでよく児童虐待のニュースが報道されていて、夫と「無理に産まなくても、困っているこどもたちの力になれたらいいね」と話していたところでした。配達営業の仕事で毎日のように児童相談所へ行っていたこともあり、里親活動のお話を聞く機会に恵まれていました。徐々に“自分のこどもと一緒に里子さんを育てたい”という気持ちが強くなり、里親に申し込むことにしました。

どのような里親活動を行っていますか?

まずは、児童養護施設で暮らすお子さんたちを、家庭生活体験としてお盆やお正月にお預かりしました。その後、3歳の女の子を約7年半預かり、昨年、普通養子縁組を結びました。さらに高校生のお子さんを一時保護で1人、もう1人を高校卒業までの1年間預かりました。

里親になることに対して、ご家族はどのような反応でしたか?

こどもたちに「親が病気などで育てられなくなったお子さんを預かりたい」と伝えたら、きちんと理解してくれました。前述の3歳の子を長期で預かることになった時は、新しい妹が来るということで、とても喜んでくれました。乳児院に迎えに行く際には、行きは誰が横に座って帰りは誰が横に座るかと、車内で席の取り合いに(笑)。私たちの親も応援してくれ、特に母は児童相談所の食堂で働いていたことがあって理解があり、すぐに賛成してくれました。

里子さんと養子縁組を結ぶまでの経緯を教えてください。

乳児院を出ることが決まっていたのですが、児童相談所から、家庭で育ててもらいたいと紹介されたのがきっかけです。今まで乳児院の先生としか接していなかったからか、最初の頃は面会する度に泣かれてしまって。ただ、泣くということは感情を表現できている証拠なので、辛いとは感じず、逆に安心しました。
半年間ほど定期的に面会するうちに懐いてくれるようになり、何度か自宅にお泊まりさせてから正式に受託。いずれ実の母親が引き取るというお話でしたが、やむを得ない事情で育てられなくなったということで、養子縁組を結ばせていただきました。ずっと「いつ戻ってしまうんだろう」という気持ちを抱えていたので、我が子として育てられると決まった時は安堵したのを覚えています。

養子縁組を結んだ里子さんが、家に来てからの様子を教えてください。

乳児院でしか育ったことがなかったので、我が家で体験することがとても新鮮だったようです。好きなおやつを選んだり、買い物について行ったりと、体験することすべてに目を輝かせていました。また、年齢が一番下なので、お兄ちゃんお姉ちゃんたちにチヤホヤされて育ちました(笑)。

大変だったことはありますか?また、どのようにしてそれを乗り越えましたか?

ご飯を作る量と洗濯物の量が増えたくらいで、特に大変だったことはありません。ただ、高校生の年頃のお子さんの場合は、接し方が難しいなと感じることがありました。注意したいことがあっても、すでに価値観が出来上がっているので、どこまで言っていいのか分からなくて。そんな時は、児童相談所や、里親養育包括支援を行う「フォスタリング機関そわか」の皆さんに相談しています。共感してもらうだけでも、気持ちがすっきりするんですよね。

どのような時に、やりがいや喜びを感じますか?

小さなお子さんは、やることすべてが可愛いし、懐いてくれると本当に嬉しくなります。養子に来てくれた子は、幼少期はすごく活発だったので、“子育てをしている”という実感をもつことができました。また、里親活動を通して、いろんな性格のお子さんがいるのだと改めて感じました。うちに来るまで別の場所で育ってきたのだから、価値観が違うのは当然かもしれませんね。「そういう考え方もあるのだ」と新たな気づきがあり、価値観が広がりました。

里子さんを預かっている時に心がけていることはありますか?

短期の場合は、好きな物を食べてもらうなど、できるだけよい思い出を作ってもらうようにしています。長期になると、お風呂掃除や犬の餌やりなど、家族の一員として家のお手伝いをしてもらうようにしています。注意しているのは、本人から里子になった理由を聞かれた時です。いずれ実の親に会いたくなるかもしれないので、例えば、「ママは体が弱かったから仕方なかったんだよ」と、マイナスのイメージを与えないように説明しています。

里親制度には、どのような意義があると思いますか?

里子さんにとっては、施設は施設の良さはあると思います。でも、家庭で育っていないと、この先自分が家庭をもった時に、どう子どもと接していいのか分からないと思うんです。愛情を注がれていないと、どう注いでいいか分からないと思うんです。だからこそ家庭の温かさを知ってもらいたいですし、小さい時にそれを経験することはとても大切だと思います。
また、母親の体調が悪くなった時などに、お子さんを一時保護のように預かるという活動が、もっと広がるといいなと思います。そういった助けが必要な母親やお子さんのために、今後も短期でも長期でも活動を続けていきたいと思っています。

里親に関心のある方へメッセージをお願いします。

子育ての経験がなくても、こどもが好きだったら問題ないと思います。ご年配の方でも、大きなお子さんであれば、孫のような感覚で預かることができるのではないでしょうか。また、一度預かったからといって、無理して育てないといけないということもありません。相性が合わないこともあるので、そういう時は一人で抱え込まずに児童相談所やフォスタリング機関に相談すると、より良い方法を考えてもらえます。
また、横の繋がりを作りたい方には、里親の会がおすすめです。ピザやパン作りなどのイベントが行われているので、里親同士で楽しく交流できますよ。困った時は、里親同士のグループLINEでいつでも相談することも可能です。難しく考えずに、少しでも興味があればぜひ里親活動にチャレンジしてほしいと思います。