「ヤングケアラー」とは?
「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されるような家事や家族の
世話などを日常的に行なっている子どものことです。責任や負担の重さにより、
学業や友人関係などに影響が出てしまうことがあります。
家族のために頑張る
キミにエールを。
家族のために頑張ることは大切なことかもしれません。
でもそれは子どもたちの未来や権利を奪うものであってはなりません。
ヤングケアラーとは
「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められるこども・若者」とされています。
「過度に」とは、こども・若者が家族の日常生活上の世話を行うことにより、
こどもにおいてはこどもとしての健やかな成長・発達に必要な時間(遊び・勉強等)を、
若者においては自立に向けた移行期として必要な時間(勉強・就職準備等)を、
奪われたり、ケアに伴い身体的・精神的負荷がかかったりすることによって、
負担が重い状態になっている場合を指しています。
また、「家族の日常生活上の世話」には、介護に加え、
幼いきょうだいの世話、障害や病気等のある家族に代わって行う家事や労働のほか、
目の離せない家族の見守りや声掛けなどの気遣いや心理的な配慮、通訳なども含まれます。
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障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
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家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
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障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
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目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
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日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
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家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
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アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
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がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
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障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
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障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている
子どもの年齢や成熟度に合った家族の世話やお手伝いは子どもの思いやりや責任感などを育むことにつながりますが、
年齢等に見合わない身体的・精神的に過度な負担が続くと、子どもの心身や将来に様々な影響が出る可能性があります。
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学校生活への影響
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遅刻・早退・欠席が増える
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学校に通えない
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勉強や部活の時間が取れない
など
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進学や就職への影響
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自分の可能性範囲を狭めて考えてしまう
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自分のやってきたことをアピールできない
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家族の世話を継続するために希望の進学・就職先を諦めてしまう
など
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対人関係への影響
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友人等とコミュニケーションを取れる時間が少ない
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誰かに理解してもらうことや相談することを諦めてしまう
など
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ヤングケアラーだった
わたしたち
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小林 鮎奈
さん小学校のころから、母親がこころの病気になり、小さい頃から大きくなるまで主に気持ち面のサポートをしてきた。大きくなってからは、話を聞くことだけでなく、一緒に通院に付き添って先生に相談したり、薬のことや通院先の病院を探したり、社会資源の手続きなどを調べて相談に行くなどしてきた。
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当時、ケアを抱えている自身の状況をどのように捉えていましたか?
小学生のころは「ケア」という感覚は全くなくて、私の中の日常でした。ただ聞くだけしかできず、答えのない日々やたくさんの困りごとは悲しい気持ちになることも多かったです。中学生のころは、言葉にならないモヤモヤした気持ちがつのって、投げやりになったり学校に行かなくなることもありました。 高校生くらいから、自分で調べて母の病気のことを詳しく知りました。そこからは、少しでも良くなる方法があるのではないかと思い、自分なりに調べながら相談に行き、できることをしていました。 答えのない「ケア」を自分なりに続けることと、自分の生活を何とか送ることがどちらもとても大変でした。
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当時、支えになった出来事があったり、支えになってくれた人はいましたか?
中学生のころはよくお客様サービスセンター(無料の電話相談)に電話をしていました(笑)物の使い方とかそんな内容でしたが、誰かと話したかったのだと思います。そして自分の話を聞いてほしかったのだと思います。 また、中学生の頃の担任の先生の存在もとても大きかったです。先生へは相談などはしたことはなかったのですが、「気にかけ続けてくれていた」という存在が、中学校を卒業したああとも、大人になってからも、物事を頑張る糧になりました。
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当時、どういったサポートがあれば良かったとお考えですか?
母を助けてくれる人、母の話を聞いてくれる人がいたらいいな・・といつも思っていました。病気のことを親身に相談にのってくれる方がいたら、私の不安や負担も違ったのだろうと思います。 自分のことに関しては、進路の相談にのってもらったり難しい手続きを一緒にしてくれる人などがいたら、とても心強かっただろうと思います。
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周囲の大人が「もしかしてヤングケアラー?」と思ったとき、どのような接し方や声かけをしたらよいでしょうか?
一人一人いろんな家庭の状況や年齢によって状況も様々だと思うので、一人一人に寄り添う姿勢が大切だと思います。 気になる子どもがいた時に、その子が困っていることはないかな?おうちの力になれることはないかな?という気持ちで寄り添う姿勢が大切だと思います。 話すことも勇気がいることなので、たとえその時に子どもが話さなかったとしても、困った時や話したいと思った時に話せるような「気にかけている大人がいること」を伝え続けることが大切だと思っています。
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現在、ケアを抱えてつらい思いをしている子ども達や家庭に対して、どのような支援が必要だとお考えですか?
相談しようと思ったケアラーが繋がれるような、分かりやすい窓口の存在はとても大切だと思います。子どもの自身を支えることも家族全体を支えることもどちらも大切なことなので、既存の支援窓口が横に繋がり合える支援の仕組みが重要だと思います。 また、ヤングといっても18歳を超えてケアの状況が大きく変わるわけではありません。年齢で区切られず、さらにヤングケアラーかそうではないかに捉われずに、幅広く間口を広げておくことが、必要な人に届く支援になるのではないかと思っています。
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今悩んでいるヤングケアラーへ
当時の私は「自分だけで、どうにか頑張らないといけない」と思っていました。 けど、様々な仕組みを知って、実は頼り先がたくさんあること、大人は子どもの頃の自分が思っているよりも多くの知見をもっていることを知りました。だから、今もし1人で悩んでいたり1人で頑張り続けている人がいたら、安心して周りの大人に頼っていいということを伝えたいです。一緒に、「あなたは1人じゃない」ということも伝えたいです。
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ヤングケアラーの保護者など、ケアを受けている大人達へ
「ヤングケアラー」という言葉が、いろいろな形で広がり、ネガティブな印象を与えることも多いかと思います。けど、決してネガティブな側面だけではありません。自分の経験で言うと、私自身もケアしてきたことや母が病をもっていたからこそ学んだことや培ってきたこともたくさんあります。ケアをしている子どもは、家族のことを思っています。そしてケアが必要だということも、何も悪いことではありません。ヤングケアラー支援はそんな子どもと家族を守る支援なので、安心して第三者を頼ってほしいと思います。
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ヤングケアラーの周囲にいる大人たちへ
私の家庭は、“おせっかい”と言われるような、関わり続ける大人や踏み込んだ大人の存在に時々助けられました。今のご時世はネットでいろいろな情報を見たり誰かとやりとりをすることができますが、子どもにとっては「身近にいる存在」はとても大きいです。 気にかけ続け、時には踏み込み、子どもの声を聞いてくれる、そのような大人の存在が、子どもの未来につながると思います。 子どもが安心して、自分の人生と、家族の人生を考えることができる、そんな社会をが広がることを願います。
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氏原 拳汰
さん大学時代、レビー小体型認知症を持つ祖父の介護をしていた。介護が本格化し始めたのは大学2年のときで、ちょうど、社会がコロナ禍に突入したタイミングだった。大学の授業は全てオンラインになり、私自身が家にいる時間が長くなったこと、さらに、両親が共働きであったことなどもあり、祖父の介護を手伝うようになった。
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当時、ケアを抱えている自身の状況をどのように捉えていましたか?
介護により、友だち等との関係性が薄れてくるにつれ、孤立感を強く感じるようになりました。 ただ、介護を始めた当初は、自分が「ケアラー」であるという自覚はあまりなく、当たり前のことをしているだけだと思い、淡々と日々の介護に向き合っていました。また、自分が置かれている現状や直面している辛さについても、あまり考えないようにしていたことを覚えています。
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当時、支えになった出来事があったり、支えになってくれた人はいましたか?
実は、ケアの話を同世代に理解してもらうことはなかなか難しく、自分から話をすることを避けていた部分がありました。 しかしある時、所属していたサークルの先輩に、祖父の介護について知らせたとき、「何か困ったことがあれば、すぐ相談にのるよ!」と優しいメッセージをくれました。 それがすごく嬉しくて、心の重荷が少し軽くなったような気がしました。
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当時、どういったサポートがあれば良かったとお考えですか?
サポートというより、 選択肢が欲しかったです。 祖父を一人で置いていく訳にはいかないので家から一歩も出られない、祖父のことを抜きにして自分の将来のことを考えられない...、当然ながらそんな毎日の中に、自由な選択肢なんてものは、存在しません。 そういった現状を補強するような「支援」より、自分が何かを選び取れる「きっかけ」を欲していたように思います。
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周囲の大人が「もしかしてヤングケアラー?」と思ったとき、どのような接し方や声かけをしたらよいでしょうか?
僕自身は、「声をかけてほしい」、というより、ケアの話を誰かにちゃんと「聴いてほしい」という思いが強かったように思います。 だから、もし支援者側が「話を聞きたい」という思いを持っているのだとしたら、むしろ子どもや若者側に「この人に話したい」と思われるよう、接し方を工夫する必要があると思います。
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現在、ケアを抱えてつらい思いをしている子ども達や家庭に対して、どのような支援が必要だとお考えですか?
子どもや若者が「つらい」というSOSを出した場合でも、同じ家族の人や周囲の大人が様々な要因により、それに気づけていない、あるいは、気づかないフリをしている場合もあります。 その場合、ケアラー本人はもちろん、周囲の人たち(家族等)も含めて、支援の輪の中に入れていかないと、根本的な問題解決に繋がらないことが多いように思えます。そのような、一家族に対する、包括的な支援体制の構築が急務ではないでしょうか。
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今悩んでいるヤングケアラーへ一言
辛いと思っても、それを一人で抱え込んでしまうことはありませんか。 ケアのことを言葉にすることで、受け入れられない現状を認めてしまうことになるんじゃないか、という不安を持っていませんか。 あなたの気持ちと懸命に向き合い、受け止めてくれる人は必ずいます。そのような他者との出会い、あなたが自分のペースで少しずつ、その苦しさを手放せますように。
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ヤングケアラーの保護者など、ケアを受けている大人達へ
自分自身がケアを必要とすることを、決して責めないでください。 お子さんのこと、その子が側にいるあなたの人生のことを、どうか誇りに思ってください。 あなたも、あなたの家族も、皆がかけがえのない存在です。 お子さんの幸せと、あなた自身の幸せ。その両方を真剣に考えてくれている他者が周囲に必ずいます。そういった他者との繋がりを続けてください。
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ヤングケアラーの周囲にいる大人たちへ
当事者である子どもや若者の話を聴くということを忘れないでください。大人の勝手な思い込みだけで彼らを振り回したり、それに基づいたメッセージを伝えたりすることは、彼らを深く傷つけ、結果として、より事態が深刻化していくことに繋がりかねません。 あくまでも対等な立場で、彼らの考えや感情に寄り添って伴走していく姿勢が、支援者に求められるように思えます。
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高尾 江里花
さん中学2年生の秋に母親が脳内出血を発症し、後遺症として右半身不随と失語症を患ってしまう。主にお風呂や排泄の介助など身体的ケアや、言葉を発することができない母に代わり、相手との意思疎通役を担っていた。
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当時、ケアを抱えている自身の状況をどのように捉えていましたか?
正直、日々ケアをしている生活が当たり前になってしまっていたので、生活に制限がありやりたいことを諦めることがあっても仕方ないなと思っていました。身体が不自由な母親に比べたら私は平気だ、頑張らなきゃと思いながらケアをしていました。
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当時、支えになった出来事があったり、支えになってくれた人はいましたか?
ケアをしている自分ではなく、普通の学生としてほかの子と変わらずに接してくれる学校の友人の存在はとても大きいものでした。また、‘’頑張ってね‘’と言ってくる大人が多い中、‘’頑張ってるね‘’と言ってくれた母が通っていた作業所のスタッフさんがいてとても心が軽くなった記憶があります。
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当時、どういったサポートがあれば良かったとお考えですか?
自分が当事者の頃は、周りの大人や福祉サービスに相談するということが全く頭になかった。今思えば相談したらどうなるか、自分にとってどんなメリットがあるかなどが分かると相談してもいいかな?と思えた気がするので、学校などでそういった資料が配布されたり、相談員の方が各クラスに直接出向いて何者なのか?を学生にも分かるように説明するといいかもしれません。
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周囲の人が「この子はもしかしてヤングケアラーかな?」と思ったときに、どのような接し方や声かけをしたらよいでしょうか?
直接ケアに対して触れるのではなく、最近学校はどう?とか勉強は難しい?など他愛もない声かけから始めることがいいかと思います。まずは子どもが話しやすい内容からコミュニケーションをとることで信頼関係を築いてほしいです。あとは他愛もない話の中で「実は、、、」の困っていることが見つかることもあります。
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現在、ケアを抱えてつらい思いをしている子ども達や家庭に対して、どのような支援が必要だとお考えですか?
相談することは悪いことではないし申し訳なく思う必要はない、人生をより良くするためのひとつの手段である、というように相談することはプラスだと捉えてもらえるようなメンタル面での支援が必要だと思います。
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今悩んでいるヤングケアラーへ一言
家族の為に毎日頑張っていることは、大人になってからたくさんの人と出会い接する中で役に立つことがたくさんあります。だから自分に自信を持ってほしいです。 また、ちょっとでも辛いな、大変だな、心配だなと思うことがあれば友人でも先生でもそのほかの人たちでもいいので一度話してみてください。話すことは自分の為にも大切なご家族の為にもなる行動です。
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ヤングケアラーの保護者など、ケアを受けている大人達へ
ヤングケアラーの子たちは、ご家族の皆さんのことを本当に大切に思っています。皆さんも自分らしく毎日を過ごしてくださることがヤングケアラーにとっても嬉しいことのひとつです。あとはできればいつもありがとうの気持ちをぜひ定期的に伝えてあげてほしいです。頑張っていることがカタチに繋がっていると子ども自身が分かり活力になるかと思います。
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ヤングケアラーの周囲にいる大人たちへ
ヤングケアラー自身が自ら相談することはかなり勇気が必要です。繊細な問題ではあるけれど子どもが話してくれるのを待つだけではヤングケアラー問題が解消することはありません。まずは定期的な声かけ、いつでも気にかけてくれているという安心感を持ってもらえるように働きかけていただきたいと思います。
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平井 登威
さん幼稚園の年長時に父親がうつ病になり、感情の起伏が激しくなったことがきっかけ。小学生の頃から父親の愚痴を聞いたり家族の喧嘩の仲裁に入ったりするなど情緒的ケアを行っていた。
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当時、ケアを抱えている自身の状況をどのように捉えていましたか?
周りの友達の話を聞いているととても仲が良く、自分の家との違いを感じていた。家事や介護などのケアはなかったが、家にいる時は常に精神的に追い込まれている状態であった。家族のことに対して恥ずかしさを感じており、外では騒ぐ明るいキャラでいることで周りから家族のことを悟られないようにしていた。
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当時、支えになった出来事があったり、支えになってくれた人はいましたか?
サッカーをしていたことが大きかった。サッカーが父親にとっての精神安定剤のようになり、僕のサッカーの調子によって気分が浮き沈みすることに対する苦しさもあったが、誰にも相談できない状況の中でサッカーをして毎日身体を動かすことができていたのは大きかった。
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当時、どういったサポートがあれば良かったとお考えですか?
遅刻や欠席、問題行動、提出物を出さないなど様々な形で表出する生きづらさ、苦しさを表面的に捉え、怒るのではなく背景を想像して接してくれる、日常生活での関わりを通して自分を信じて話を聴いてくれると確信できる先生や大人がいて欲しかったと思う。大きな話になってしまいがちであるがまずは身近なところからだと思う。
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周囲の人が「この子はもしかしてヤングケアラーかな?」と思ったときに、どのような接し方や声かけをしたらよいでしょうか?
何を言うかではなく、日常生活でどう接しているかだと思う。どれだけ良いことを言われたとしても普段自分を見てくれない、否定ばかりしてくるような人であったら信頼はできない。また、『助けてあげないと!』と前のめりに関わり、本人の声を聴かずに支援しようとしていくことは暴力性をもつことに自覚的であるべきだと思う。
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現在、ケアを抱えてつらい思いをしている子ども達や家庭に対して、どのような支援が必要だとお考えですか?
人それぞれ状況が違うのでどんな支援が必要か一概には言えないと思う。同じヤングケアラーという言葉にもかなり幅があるためもう少し細分化して支援をしていく必要だと思う。また、『ヤングケアラーだから〇〇が必要』『ヤングケアラーは〇〇』と勝手にジャッジしないことがとても大切だと思う。
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今悩んでいるヤングケアラーへ一言
もし、誰にもつらさを話せないなら無理して話さなくても良いと思います。でも、『つらい』『楽しい』『嫌だ』といった感情はあなたのものだからこそ、あなたが感じた感情は大切にして欲しいなと思います。励ましの言葉は簡単に言えないけれど、なかなか感じられないことかもしれないけど、あなたは1人じゃないです。
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ヤングケアラーの周囲にいる大人たちへ
彼ら・彼女らの多くは『ジャッジ』されることは求めていません。 支援者として関わる人たちは『子どもたちの声を奪う力』『支援者としての優位性』を持っていると思います。 ヤングケアラーのイメージをもとにジャッジするのではなく、『〇〇さんのために〜してあげないと!』ではなく、彼ら・彼女らの声や声にならない声に耳を傾けて欲しいなと思います。『自分が思う良い』ではなく、『当事者にとって本当に良い』を真ん中に置いて関わり、支援をしていただけると嬉しいです。
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ヤングケアラーに関する
相談窓口
※平日とは月曜〜金曜日(祝日・年末年始(12月29日〜1月3日)を除く)のことです。
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●柳川市
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●八女市
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●行橋市
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●吉富町